物事を決める要素
うどんとラーメン。お昼に食べるならどっち?という問いに対するあなたの答えはどちらでしょうか。「それはその時に寄るよ」確かに。季節や天候、おなかのすき具合、誰と食べるかなどにも寄ります。その他に重要視していることがありませんか。私は「香川のうどん」のネーミングにひかれてうどんにしました。四国、香川県、というとうどんの老舗ですから。ということで、お店の名前もその一つです。私が考えを巡らせていたのは商業施設内にあるフードコートの一角。となりは「神座」というフレンチシェフが作るラーメン店です。「神座」と書いて「かむくら」と読む・・・このお店にも少々惹かれました。お店の前は長蛇の列。一方、うどんやさんは6人ぐらいが並んでいる程度。そうですね、時間もとても大事な決定要素です。
視線の動きをチェック
さて、その一福という名のうどんやさん。カウンターでうどんの種類を注文して、左に進むと、様々な天ぷらがあるので、好きなだけのせて最後に合計の金額を払うというもの。注文をするとうどんをゆでて、御出汁を入れて、トッピングする・・・これだけです。早そうです。調理場には4人の若者がいました。役割分担は、注文1人、調理2人、会計1人かな?と思いきや会計以外は、注文を受けるとそのまま調理に入り、カウンターに出すまで担当しているようです。「いらっしゃいませ、何にしますか?」の声を耳にしながら、メニューをじっと見ていた私は意を決して顔を上げました。「わかめうどんください」するとその若者は微笑みをたたえながら、まっすぐ私を見てさらに言いました。「つめたいのですか?」
あれ?今、こっちを見たかな?と一瞬感じながら「あ、いえ暖かい方で」と返すと、またその人は「暖かいわかめうどんですね」とまっすぐに目を向けて確認しました。そしてそのまま私と一緒に横に移動、「ちょっとお待ちください」とコメントしてから作業に取り掛かりました。視線はその間、厨房内を確認したり、うどんの様子を確認したり、その他のところにも動いているようです。
どこにいても目が合う
私自身も厨房の人の動きを見ながら待つこと数分。「ハイお待たせしました!」との声。言われてハッと顔を上げると、にっこりわらいかける目が注文のわかめうどんについてきました。あれ?今、また目があったよね・・・と思いつつ、会計に横移動すると、今度は会計の若者の目が私とバチッと合いました。「お会計します。」 なんと、このようなカウンター式でしっかり視線を合わせてくる人たちがいるなんて・・・意外な驚きでした。厨房から見たら、ベルトコンベアーに載ったお客さんです。わざわざ目を合わせなくても話は聞こえるし、むしろ注文や作業に間違いのないように確認した方がよいのではないか・・・頭の中でなぜだろうと問いかけながら、なんだかとても気分がよくなっていました。どうぞおいしく召し上がってくださいねと言われているような気がしました。
目を合わせる戦略
私はペッパー君が好きです。Pepper君とはデモ用の人間型ロボット。大きなつぶらな瞳でこちらを見ています。お店に入りますか?と問いかけているようです。ペッパー君はどこから覗いても目が合うのです。とても不思議ですが、ペッパー君が反応してくれなくても可愛くて仕方がありません。いつ見てもこちらを見てくれているほほえましさ。感じたことはありませんか。
”人の目を見て話す”という行為は一瞬でこころをつかむことにつながります。話す内容に説得力をもたらすことができるのです。自信というオーラをまとった言葉が視線を通して心に響いてくると分析できます。目の合ううどんやさんでは味や値段のみならず、カウンターサービスでも勝負しているように見えます。つまり厨房で調理するだけでなく、声がけと笑顔と視線を戦略的に使っているのです。そしてもう一つ、私はこの分析が確信に変わる事実に気づきました。目の合ううどんやさんはオープンキッチンなのです。調理しているところを見せることが演出です。それに元気のよい声や笑顔、目を合わせることは必要なサービスなのだと。たくさんあるお店からうどんを選択してもらうには、間接的ながらこのような方策も十分ありだなと感じました。
自分を振り返る
”目を合わせる”について改めて考えてみましょう。みなさんは出来ていますか? 視線をはずす人は結構います。会話は成立しているのになぜか目が合わない・・・合うたびに視線を外される。目で目を追いかけているかのようです。一度、その疑問を相手に話したことがあるのですが、「え?あ、なんとなく恥ずかしかったので・・・」という返事。確かに凝視されると恥ずかしかったり、突然目が合うとびっくりするのはよくわかります。瞬間的に話すことを忘れることすらあります。一方、知らない人と視線を合わせるのは怖さもあります。でも、やはり目を合わせて会話をする方が自然です。話しかけているのにいつまでも携帯から目を上げない、返事はするけど別の方を向いているなど話を聴いているとは思えません。あなたの話を聴き、尊重していますという姿勢は素直に視線を送ることです。恥ずかしいなどと言っている場合ではありません。なぜなら、このようなことを積み重ねることにより信頼が生まれるからです。うどんやさんが信頼感を作るまで狙っているかどうかはわかりませんが、少なくともまた行こうかなと思わせるお店でした。(了)
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